日曜日の第八話、いかがでしたでしょうか。
前回今回と、知財に関するようなネタはあまりなし。先週からのながれで、技術情報の公開来るか?と思いきや、結局大学側では帝国重工との共同開発はそのまま進めたようですね。
さて、今回は知財とは少し離れて、登場する各社の経営戦略を見てみたいと思います。(2話分なので少し長くなりますがご容赦ください)
まず帝国重工。超巨大企業とはいえ経営環境は厳しいようです。ロケット事業など不採算事業を縮小して、新分野に活路を見出そうとします。加えて、内製化は重要な課題となっています。
一方、佃製作所は、主要取引先である帝国重工の経営戦略の転換に振り回されます。中小企業経営ではよく聞く話ですね。そういうわけで、佃製作所も農業分野への進出を試みます。
ちなみに、大学(野木教授)については、ベンチャー企業や帝国重工に振り回されつつ、戦略らしき戦略も印象に残りません。(大学は研究機関なので、そんなものはいらない…かもしれませんが、それでいいのか?ともやもやします)
結局紆余曲折の末、帝国重工は大型トラクターに舵を切ることになりました。一方、佃製作所は小型にこだわります。
各社の経営戦略に注目しましょう。帝国重工は成長戦略(多角化)と競争戦略(差別化もしくは差別化集中)です。佃製作所もまた多角化を選択します。
ここでアンゾフの成長マトリクス(成長戦略)の登場です。中小企業診断士にはおなじみですね。(意外とこのフレームワークはシンプルで使い勝手が良いので、特に補助金申請書の事業計画書にはよく使います。私だけかもしれませんが…)
アンゾフの成長マトリクスでは、事業の成長を「製品✕市場」と「既存✕新規」を2✕2のマトリクス上に、戦略の方向性として4象限に配置します。組み合わせると、①市場浸透(既存製品✕既存市場)、②(新)市場開拓(既存製品✕新規市場)、③(新)製品開発(新製品✕既存市場)、④多角化(新製品✕新規市場)となります。
お気付きの通り、④の多角化は最もハードルの高い選択肢です。一般的には①②③④の順に成長戦略を検討することになるでしょうか。
ライバルのダーウィン・プロジェクト(ダイダロス、ギアゴースト、キーシンとヤマタニ)は、③といったところですね。(ヤマタニは農業トラクターのトップ企業らしいですし、販路開拓の苦労はしないでしょう)
7話、8話で少し話がわかりにくくなりました。帝国・佃・農大vs下町連合ならわかりやすいのですが、現状では帝国・農大(アルファ1)vs下町連合(ダーウィン)で、佃製作所は蚊帳の外。大企業vs中小企業的にドラマ内では煽っていますが、中小企業が悪役(笑)。
ちなみに、ダーウィン・プロジェクトみたいな事例は、中小企業庁が小躍りしそうなネタです。ご興味があれば中小企業白書をご一読ください。(中小企業診断士は試験にも出ますので、最新版は必ず目を通しておきましょう)
第八話は農大野木教授の、まさかのオープンイノベーション展開を期待していましたが、そうはならなかったようです。とはいえ、蚊帳の外の佃製作所がどう舵を切っていくのか、来週も楽しみですね。
関連情報:
中小企業庁、2018年版「中小企業白書」のホームページ(外部サイト)
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/